総合的なリスク管理への取り組み

 業務が一段と多様化・高度化するなかで、事業の展開に伴い発生するリスクの多岐にわたり複雑化しています。
 こうしたなか、当社グループでは斯かるリスクを的確に把握・分析し、適正に管理・運営していくことが経営の健全性の維持・向上の観点から極めて重要であるとの認識に立ち、リスク管理態勢の強化・充実に取り組んでいます。
 当社グループでは業務に伴って発生するリスクを、定量的な管理を行うフィナンシャルリスクと、定性的管理を行うオペレーショナルリスクに分け、各々のリスク管理体制を定めるとともに、リスク管理委員会を設置し、オペレーショナルリスク、フィナンシャルリスクを一元的に管理する総合的なリスク管理体制の構築を行っています。
 信用リスク・市場リスク・価格変動リスクのフィナンシャルリスクについては、リスクキャピタルの配賦を軸とした管理の枠組みをもとに、リスクの所在と大きさをモニタリングしており、事務リスク・システムリスク等のオペレーショナルリスクについては、リスク事象の発生状況、対応策、予防策等をモニタリングしています。
 加えて、多面的な金融サービスの推進や専門金融分野の拡充を進めていく過程においては、各種案件に内在する多種多様なリスクの把握とそれらへの対処などのリスク管理態勢の更なる充実が従来にも増して重要と考えています。そこで、新商品の取り扱いや新しい業務の開始に際しては、フィナンシャルリスク、オペレーショナルリスクの双方の観点からリスク評価を行い、事前に十分な検討を行う態勢を構築して、管理強化に努めています。

【主なリスクと管理態勢】

フィナンシャルリスク リスクの内容 リスクに対する主な取り組み
信用リスク 当社グループの事業活動の主であるリース取引等は、取引先に対し比較的長期間(平均5年程度)に亘り、賃貸という形で信用を供与する取引で、取引先からリース料等を全額回収して当初の期待収益が確保されます。経済状況の低迷により、取引先の業況が悪化し、当初想定したリース料等が回収できない場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループは、取引開始時における厳格な与信チェック、リース物件の将来中古価値の見極め等により契約取組の可否の判断を行うとともに取引開始後は、取引先の与信状況につき定例的にモニタリングを行い、必要に応じ債権保全等の措置を講じております。また、ポートフォリオの信用リスクを、統計的手法を利用して定量化し、リスク量のモニタリングを行っております。
市場リスク 当社グループは主たる事業の資金調達について、外部金融機関からの借入れおよび債券発行に依っております。当社グループの収入である金利の条件(期間・固定または変動の別)と、当社の支払である金利の条件が異なることにより、金利の変動が受取金利と変動金利の差額の変動を招来し、金利収益に影響を与える可能性があります。 このような金利変動に対応するため、デリバティブ取引を利用したヘッジを行っております。具体的には、ALM(資産負債の統合管理)の手法によるマッチング比率(固定・変動利回りの資産に対して固定・変動金利の負債・デリバティブを割り当てることにより、資産のうち金利リスクを負っていない部分の割合)の管理を行っております。また、金利変動等によるリスクを、統計的手法を利用して定量化し、リスク量のモニタリングを行っております。
流動性リスク リース取引や貸付、アセット物件の取得および事業への投資にあたっては、多額の資金調達を行っています。経済環境の急激な悪化や、当社グループの信用力低下等により、金融機関や投資家より事業継続にあたって充分な資金が調達できず、当社グループの業績に影響を与えるリスクがあります。 借入のほか、社債・コマーシャルペーパー等による資金調達の多様化を図るほか、コミットメントラインの取得により緊急時の資金流動性を確保しております。
価格変動リスク
(アセットリスク)
当社グループは、不動産・航空機・船舶を保有して賃貸するほか、投融資を行い、リース料収入を得るほかアセットを売却して資金の回収を図ります。取引先の経営状況が悪化した場合は、別の取引先との契約に切り替えたり、アセットを売却し業績に与える影響を最小限に押さえる措置を講じております。景気動向や市場の状況により、アセット価格が変動し期待する価格で売却できないリスクや、取引先の運営状況によって想定された収入が得られないリスクがあります。 取引開始においては、将来のアセット価値や流動性等を慎重に見極めて総合的に判断するほか、開始後も継続的にアセットの運用状況や価格をモニタリングしております。また、取引先の信用リスクやポートフォリオにおけるアセットの価値変動リスク量を定期的に計測し、モニタリングを行っております。
価格変動リスク
(投資リスク)
当社グループは、プロジェクト向け投融資、出資等によってさまざまな事業に対する投資活動を行っています。このような投資活動においては、経済状況の悪化により想定通りの収益が確保されないリスク、投資額が回収できないリスク、出資金額が投資時点の水準を下回るリスクがあります。 取引開始において、当該事業の将来の投資価値、流動性、市場優位性等、慎重に見極めて総合的に判断するほか、開始後も継続的に運用状況をモニタリングしております。また、各投資事案における投資価値の変動予測を定量リスクとして定期的に計測し、モニタリングを行っております。
オペレーショナルリスク リスクの内容 リスクに対する主な取り組み
事務 事務管理において、人為的ミス、不正等により業務や営業活動の停滞、取引先からの信用の失墜等を招来し、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。 事務管理に関する規程の整備、事務体制の見直しによる堅固な体制構築を実施し、事務品質の向上に努め、人為的ミス、不正を未然に防止する体制を整備しております。
システム 取引実行に関する管理、会計処理、各種契約管理、取引先管理、リース物件の資産管理等の為に様々なシステムを利用しています。これらのシステムにおいて、保守の不備や開発の不具合により正常に稼働せず、当社事業の遂行に支障を及ぼす場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。 当社システム部門および協力会社において、強固な保守管理体制を整備し、運営しております。また、障害発生時の対応方法につき定期的に見直しを実施、整備を行っております。
サイバーセキュリティ システムに対し、外部からの不正アクセスやコンピュータウイルスの侵入、不正行為等により、システムの停止、機密情報の漏洩等が発生した場合、当社グループの事業活動の継続に影響が発生したり、重要情報の外部漏洩による社会的信頼が失墜し、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。 ソフトウェアを最新の状態に更新し、サイバー攻撃への防御を固めるほか、全社員に対し標的型メール訓練や情報セキュリティに関する社内教育を継続的に実施、トラブル発生を未然に防ぐ為の堅固な体制を整備しております。
地震・風水害・感染症・テロ等 地震・風水害・感染症・テロ等の事象が発生した場合、当社グループの事業活動に著しい影響が生じる可能性があります。また、事業活動の停止や低迷により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。 緊急事態においては、緊急対策本部を設置し全社的な対応を行う体制を敷いております。また、システムが稼働しない場合のバックアップ体制を整備、従業員が出社できない場合におけるテレワーク体制の整備を行っております。
制度変更 当社グループは、現行の法律・税務・会計等の制度や基準をもとに、リース取引等をはじめ総合金融サービスの提供を行っております。これらの諸制度が大幅に変更された場合は、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。 このような変更への対応として、諸制度の改廃状況について情報収集を行うとともに経営陣と共有するほか、社内における管理体制を整備し機動的な対応を行い当社グループへの影響を最小限にとどめる為の対応を講じております。
コンプライアンス 法令や社会規範・社内ルール等の遵守を怠った結果、法的処分の対象となったり、社会的信頼の失墜等により当社グループの業績に影響を与える可能性があります。 全社員に対し、コンプライアンスやマネーロンダリング、テロ資金供与・不正行為の未然防止に関する教育を継続的に行い、取引を未然に防止する体制を整備しております。